「じゃあって教室にもどっていったよ。」
「なんてもったいないことしてるの!」
「どうして?用事が終わったらべつに何も・・・」
「だってサッカー部のエースの高倉くんよ。」
「高倉くんってサッカー部なんだ。」
「だめだ、こりゃ。なるみは学園生活より目の前のお金だもんね。」
「ああっ!お金で思い出した。
どうしよう。またバイトが滞っちゃう。」
もう用事はないとばかりに、なるみの部屋にいた人たちはみんないなくなった。
「そういうことだったのね。
高倉くんて人気者ってことがわかったわ。
あっ・・・でもそれって、もしや私は高倉くんのファンにいじめられるかもしれないってこと?
そんなことになっちゃったら、嫌だなぁ。」
しばらくして、なるみは真樹がいないことに気がついた。
「お仕事で出かけてるのかな。管理人室に何か置いてくれてるかもしれないから、のぞいてみよっと。」
なるみは部屋を出て2階から1階へ手すりを両手でつかんでくじいた左足をかばいながら降りはじめた。
あと3段ほどというところで、なるみは体のバランスをくずしてしまい、思わず目をぎゅっとつぶった。
顔にドンと大きいものがぶつかって、手足を掴まれているのがわかった。
おそるおそる、自分を助けてくれた人を見ると長野だった。
「あ、先生。す、すみません・・・」
「すみませんじゃないぞ。山田、自分の教室をのぞいてすぐに帰ったろ。
補習は今日もやるはずだったんだぞ。」
「えっええーーーーーーっ!遠足の日なのにぃ・・・?」
「俺は補習を始めるときに言ったよな。
俺のいる2週間で数学だけでも追いつこうって。
まぁ、今日はその足だから、プリントの宿題を渡すだけにしておこうかと待ってたのに、
ぜんぜん教室へ来ないから、保健室行ったら、帰ったようだって先生がいうし。
それでわざわざ寮まで届けに来てみれば、上から降ってきた。
で、どこへ行こうとしてたんだ?」

