虹が見えたら


「なるみのかわいいーーーー!クマさんじゃん。」


「私それ、知ってた。」


なるみの隣のクラスの若村陽子がそう言うと、なるみは思わず理由をきいた。


「オーナーが伊織さんに言ってた。
伊織さんがなるみのイメージでちょっと困ってたみたいで、なるみのイメージはかわいいクマさんだってオーナーが話してたのを夕飯前に食堂できいたわ。

ネタバレになっちゃいけないと思って私のじゃないし、黙ってたけどね。」


なるみの頭には、ふわふわ笑顔の真樹の顔が浮かんでいた。

((ああ~~~やられたわ。ほんとに子どもじゃない・・・これって。))


かといってお弁当を残すのももったいないし、お腹もすいていたので、なるみは残さずにお弁当をたいらげた。


帰り道も徒歩だが、空が曇りだし、少し雨が降り出した。

皆、持参したポケットコートやカッパを羽織って歩いていく。



そんなときだった、なるみの上を歩いていた生徒が石の上に置いた足をすべらせ、なるみの上に降ってくるように落ちてきた。


「きゃあ!!どいてぇーー!」


「ああっ!」


なるみが落ちて来た生徒を抱えるようにして動きは止まったが、なるみは動けなかった。


「あ、足が・・・いたっ」


クラスの後方を歩いていた長野が駆け寄り、なるみの足の様子をみる。


「捻挫だな・・・痛いけど曲がるだろ?」


「は、はい。でも・・いたっ!痛いです。」


「この天気だからなぁ、ここで留まって待つのは危険だと思うし・・・」



長野がそう言うと、後から来たクラスの男子がなるみの横にしゃがんだ。


「俺がおぶってやるから、帰ろう。」


なるみが何も言う前から、長野はその男子生徒のリュックを取って、なるみを抱えて男子生徒の背中にのせる。