なるみは、まさか・・・と思いながら真樹の顔を見上げると、砕けはしないのだろうけれどそれに近いほど悲しげな表情を浮かべている。
((だめだ・・・この顔にあたし・・・弱い。どうしよう・・・))
「遠足にいっぱい持って行くのは先生に叱られるからダメだけど、帰ってきてからいっぱい食べたいっていうのじゃダメですか?」
「いいよ。ごめんね・・・家族にお菓子を買ってあげるなんて初めてだったから、ついうれしくて。
自分のときを思い出せば、高校でお菓子いっぱいなんて持たなかったよね。
弁当が2コほしかったくらいだ。あははは」
さっきの悲しい表情ごと砕け散ったかのように、いつものふわふわ笑顔の真樹になったのを見て、なるみは苦笑いするしかなかった・・・。
お菓子を受け取っても、寄り道はダメ、長野先生と2人きりでお弁当食べちゃダメ、最初にとばしすぎてあとで友達に迷惑かけちゃダメなどなど、真樹は心配だと並べたてた。
クスクスクス・・・あはははは。
「心配はわかったから、もうおやすみ。
おせっかいやきのお兄ちゃん。」
バタン!
「あ、冗談じゃないんだからね・・・はぁ・・・。
こんなことはやっぱりにわか仕込みのお兄ちゃんだと思われたのかなぁ。」
翌朝、2年の虹色寮生たちはみんな、食堂で伊織からお弁当を受け取った。
「みんなそれぞれの個性にあわせて作ったつもりだから、今ふたをあけるなよ。」
「え~!それすごく気になるよ。伊織さん。」
「弁当のときに見せあって食べるのはかまわないけどな。
じゃ、そろそろ行かないと遅れる。
気をつけて行って来い。」
「はぁ~い。」
2年生がそれぞれの教室に向かおうとしたとき、
「おい、なるみ!」
「えっ・・・はい。」
「おまえのは特製だから、期待してろよ。」
「特製?あ、はい・・・。」

