前略、山田なるみ様

お手紙をもっと早く差し上げたかったのですが、当家も父が亡くなり遅くなってしまいました。

私はあなたのお父様とお姉様が亡くなられたあの日に、本来ならお会いするはずだった者の家族です。

あなたのご家族の訃報ならびにあなたの境遇を後で知ることになりまして、とても心配になりました。


会うはずだった父が亡くなり、我が家も家族がいなくなった悲しみを知ることになりました。
父は生前、あなたのお父様にとてもお世話になったと申しておりました。
父は若い頃の過ちで前科があったので、まともな仕事がなかなかできないでいたところを
あなたのお父様に本当によくしてもらったと喜んでいました。


それでここからが本題なのですが、なるみ様は現在高校を退学してアルバイトをなさっているようですが、もう一度高校生をなさってみませんか?


父の恩返しを私に引き継がせていただきたいのです。
本来なら会社に資金提供する約束になっていたのですし、その資金でなるみ様には高校を卒業してほしいと思っています。

もちろん住まいも高校の学生寮に住んでいただけるように手続きいたします。
じつは私がその高校の学生寮のオーナー兼管理人なのです。
悪いお話ではないと思うのですが、いかがでしょうか。

とにかく一度見学にきてみてくれませんか?
下記の住所地(地図参照)にてお待ち申し上げます。


学生寮虹色管理人 須賀浦真樹



「そっかぁ・・・この人もお父さんを亡くされたんだ。
へぇ虹色っていう名前の学生寮。
ちょっと郊外だけど、そういうところの方が癒されそうかも・・・。

明日はバイトも休みだし、行って見てこよう。
お話だけでも共感できるなら、それだけでも心丈夫な気がするもの。」



なるみは早速翌日の朝から、虹色という名の学生寮へと出かけていった。