脱ぐたびに砂が飛び出して足元がジャリっとする。
真樹はこれだけでは許してくれるはずがない。と思ったなるみは真樹に背を向けたままブラジャーをすばやくはずしてショーツにも手をかけた。
シャワー先が足元に落とされ、真樹はなるみの両手を止めさせた。
「もういいから。ごめん、ごめんね。なるみちゃん。
記者席から婚約を止めてくれたときはすごくうれしかったんだ。
兄の会社も自分の会社もすべてなくしたっていいって思って後を追いかけた。
でもね、沢井と意気投合してるなるみちゃんを見て保護者に引き戻されてしまう自分はどうすることもできないと思った。
あ、風邪をひいてしまうね。
僕も着替えるからシャワー済ませたら管理人室に来て。」
真樹は言葉途中でシャワー室を出て行こうとしたが、今度はなるみが真樹に声をかけた。
「待って。隣のシャワー使って・・・。
真樹さんもお湯かぶった方が。」
「なるみちゃん・・・。じゃ、着替えだけとってくるね。」
2人で隣同士でシャワーを使いながら話の続きをする。
「沢井さんはいい人だと思うし、私のことをたくさん思ってくれてるのもわかってる。
でも、決められないの。
会って嫌じゃないし、運命に思えるくらいよく会うし、出かけていても楽しいけど、この人だけについていきたい気持ちになれなくて。
それってひどいことだと思って真剣に考えたのよ。
沢井さんに直接、ひどいよねって話したりもしたの。
沢井さんはひたすら待つって言ってくれたけど、大きなトゲが体から抜けない限り私は動けないの。」
「トゲ?」
「うん。
そのときの気分で優しくなったり、怖くなったり、怖気づいたり、男好きになったり、たくさんの嘘の鎧を身にまとってるかと思えば、裸になって私を苦しめる痛いトゲです。
痛いトゲなのに甘くなることを期待してる私の方がバカなのかも・・・。」
なるみがそこまで言い終えかけると、真樹は仕切りのドアをあけて裸のままなるみを抱きしめてキスをした。
「今、トゲを抜かれるわけにはいかない。
俺が獲物にトドメをさしてもいいよね。」

