虹が見えたら


伊織の表情が曇る。

((もう次の何かを考えている・・・。))

「直樹様はこれまで真樹さんをずっと疎まれてきたのに、なぜ?
お体の具合のせいではないのでは?」


「ああ。負債をなすりつけてやるためだよ。」


「なっ・・・・・!」


「うまくいってない。うちの会社・・・。
真樹は昔から、気に入らないやつだ。
だが、気に入らないから実力のほどは嫌というほど知っているってやつさ。

私が困ってしまってどうしようもないと思うことを、あいつに押し付けてやると、どういうわけか真樹はいとも簡単に切り抜けてくる。
だから余計に腹がたつ。」


「だから会社も押し付けたと?
どうしようもなくなったからって・・・。
私の妹まで利用して他人の娘さんまで声をかけて・・・ですか。」



「迷惑だとはきいてない。
偽りでも真樹の嫁になりたいと思う令嬢は少なくないからねぇ。

今回はとりあえず、真樹は私の期待通りに近い成果を出してくれたから、これ以上はいじめないでおくよ。
君の妹さんにも私がわびていたと伝えてくれ。」


「はい。」


伊織は代々仕えてきた家とはいえ、須賀浦の本家筋の怖さをあらためて知らされた。






その頃、なるみは城琳学院の洋菓子店で沢井と話していた。


「真樹さんがお世話になってしまってすみません。」


「くくくっ。いきなりの挨拶なんですか?
真樹さんのお母さんみたいですね。」



「あっ・・・いちおう家族ってことで。」



「ほんとに好きなんですね。彼のことが・・・」



「彼?・・・真樹さんのこと?そ、そんなぁ」