虹が見えたら


なるみは必死の形相の真樹と声に何が何だかわからない様子になった。



「無事って・・・私は卒業旅行で京都に来ていたのよ。
メール送ったはずだけど。」



「くっ・・・はめられたか。
でも、もういい。
なるみさえ、無事なら何とでもなるさ。」



「どういうこと?私がどうして・・・」



真樹はなるみが何者かに誘拐され、無事に解放してほしければ直樹の後の代表になり、那賀建設令嬢と結婚するのが解放する条件だと犯人から言われたのだった。


それなら那賀建設内に犯人がいるのでは?ということになるが、とにかくなるみの身の安全ばかりを真樹は考えたと言った。

まさかそのなるみ本人が婚約会場に怒鳴りこんで来るなんてことは、誰も予想できなかっただろう。



真樹はなるみを強く抱きしめて「よかった」を繰り返した。

そしてふと我に返って、卒業旅行になぜ沢井がいっしょにいるのか?と真樹はなるみに聞き返した。


「沢井さんがいてくれなかったら、私は今朝そのまま観光へ出かけたところだったわ。
新聞を見たかって電話をもらって、沢井さんがこのホテルに泊まってたから私もここへ来たの。」



「昨日遅いのにデートにつきあってくれたからね。
あ、でも真樹さんはここに居て大丈夫なんですか?」



「たぶん・・・。彼女にはなるみが無事だったから話はなくなったと伝えた。
あとは・・・どうだっていいさ。」



「どうだっていいって?TSWコーポレーションはどうするんです?」



「そっちは取締役会で決めればいいだけのこと。
僕は絶対引き受けないと宣言してきたんだから。
うちの社員たちが、さっきの婚約記者会見なんて見たら、どれだけ倒れてしまうかとそっちの心労もきてるんだからね。

それより、なるみが無事でよかった。」



「携帯は・・・?電話すればすぐわかるのに。」