翌朝、なるみたちはモーニングコールで起こされてボケっとした顔をしていると、なるみの携帯電話が鳴った。
「なるみさん、起きてる?
ごめん、朝早くに。 部屋に新聞入ってるかな?」
「新聞ですか?朝刊ですよねぇ・・・何かあったんですか?」
電話は沢井からだった。
朝刊の一面の下の方を見てほしいと言われて、なるみが目をやってみると
『TSWコーポレーションの新しい代表取締役に須賀浦真樹氏が内定。
那賀建設工業代表取締役の令嬢と本日、京都市内のホテル内で婚約の儀が執り行われる。
那賀建設工業はTSWの大株主でもあり、現代表取締役の須賀浦直樹氏の体調不良後の損失などのフォロー役としても有名なところ。』
「真樹さんが直樹さんの会社の代表取締役って・・・。
婚約って・・・。」
「もしもし!なるみさん、きいてる?
それでさ、その婚約なんだけど、僕の宿泊してるホテルなんだ。
さっき、チェックアウトしようとフロントへ行ったんだけど、須賀浦さんを見かけたから少し調べた。
なるみさんは何か聞いてなかったの?」
「はい、何もきいていません。
お見合いもきいたことがないのに、婚約なんて・・・。」
「そっかぁ・・・せっかくの卒業旅行なのに、ごめん。
こんな電話してしまって。
でも、どうする?
友達と離れられるかい?
僕は少し帰りをのばすことは可能だから、こっちへ来るなら1泊部屋を押さえておくけど。
もちろん、宿代も僕持ちだから。」
「沢井さんお仕事遅れちゃっていいんですか?
いいんだったら、すぐそちらへ向かいます。」
なるみは朝食も足早にとってすぐ、沢井のところへと荷物をかついで走っていった。
フロントに荷物を届けてもらうように頼むと、沢井といっしょにある広間へと向かった。
幸いなことにドアが開いたままになっていて、いちばん奥に近いところに真樹と着物を着た大人の女性が向かい合わせで座っていた。

