沢井と事務室にもどると真樹が不安げな表情でなるみを見た。
打ち合わせは無事終了し、3人は虹色寮へともどった。


きっと帰れば、真樹にあれこれと沢井のことを聞かれると思っていたなるみだったが、予想ははずれて、真樹はさっさと管理人室へと入って仕事をまとめている。


なるみは伊織にさりげなく大崎郁未こと須賀浦郁未について聞いてみた。


「看護師の大崎さんの・・・あの子が城琳にいたとはね。」


「知ってるの」


「いちおう執事見習いしてたからな。
大崎さんは仕事がよくできるのはもちろんだが、社長の悩み事を誰よりも解消した女性だときいている。

本家の社長がそこまで悪くなってたとはな・・・でも真樹は何も言わないな。
たぶん、沢井のところまで情報がきてるなら、真樹に連絡がないわけはないはずだ。」



伊織の話をきいてなるみはそっと管理人室へ入っていった。
すると、真樹が誰かと携帯電話で話している声が聞こえた。



「今さらそんな話を持ち返されても俺は困るって言ってるんだ!
事情はわかったから、仕事の方は明日本社へ行って役員たちと相談して予定をたてることにするよ。

もう、須賀浦の名前だって返したいのが俺の気持ちだ。
けど・・・今の俺があるのもそっちのおかげでもあるから、こうやって相談にはのってる。

すまないが、もうそういう相談はべつの男に相談してくれないか。」



なるみは、きいてはいけない話だったと察して、方向を変えて管理人室を出ようとしたがぐいっと真樹に手を引っ張られた。




「盗み聞きかな?それともかわいい泥棒さん?
沢井と庭でデートは楽しかったかい?」



「デートなんてしてません。沢井さんが来る前に大崎郁未くんに会ってしまって・・・沢井さんが郁未くんのことを教えてくれただけです。」



「大崎郁未!!!
じゃあ、なるみちゃんは須賀浦直樹が入院した話や僕が直樹の仕事をすることも沢井から聞いて知ってるんだね。」