なるみはしばらく口がきけなくなってしまった。
今の自分の存在は、真樹の足元を揺るがしてしまう。
金銭面や生活面で多大な世話を受けているなるみにとって、真樹のつらそうな顔は見たくないと思った。
「大丈夫。」
「えっ?」
「真樹さんは今の生活は続けられるようにする人です。
君が大学を卒業するまで、きちんとみてくれますよ。
それで・・・その先ですけどね、その先は君次第ということ。
たぶん、なるみさんは自分の道に向かってひとりで歩けると僕は思ってます。
それでもね、今のように君は悩むときがたくさんあると思う。
あるときは心のケアであったり、または金銭面であったりとか。
僕はそのすべてをバックアップできるってことを覚えていてほしい。」
「そんな先のことなのに・・・」
「ごめんね、ウソです。
僕自身の心はもっと早く、須賀浦家が君を苦しめればいいと思ってる。
そうしたら君の心の弱みにつけこんで僕は・・・。」
「ふふっ。沢井さんがいい人なのはもうわかっていますから。
ちょっとびっくりしたけど、私の心が痛んでいたら、つけこんでもらっていいですよ。」
「えっ?」
「ただし、社会人になってからの話ですけど。」
「よっしゃぁ!ってね。あははは
ほんとにかわいい人だ。
今から僕を甘やかせると、今日のような仕事後に持ち帰ってしまうかもしれない。
ああっ!今後、彼はずっと着いてくるとも限らないか・・・。」
「もう、沢井さんったら。
でも、正直な話。
今の私は真樹さんが怖いかもしれないです。
つい最近までいい家族になれるようにばかり目標に生きてきたから。」
「まずいなって思ったら電話ください。
僕が救いだしますから。」
大崎郁未のことをきっかけに、なるみには大きな不安が待ちかまえている気がした。

