虹が見えたら


真樹は深くため息をつくと、次にドン!とテーブルをたたいた。

「ああ、普通に好意をもってきちんと段階をふんでつきあっていくような相手なら寛大に見守っていようと思ってたさ。

でも、会って3回や4回で体に触れてキスの跡までつけて俺を挑発してくるようなやつ。
ビジネスでの腹黒さはこの業界あってあたりまえだが、何も知らないなるみをずるずると罠にかけるようなやり方で・・・許せるわけない!」


「これから家族ですよ~って始まったばかりのときに大人のキスを教えた男とさほど変わりはないように思うがな。」



「俺は許すって言ってたじゃないか。伊織!」



「そうだったねぇ。あはは。
まあ、なるみ自身を意固地にさせてしまってもいい結果は出やしない。
おまえさんにとって不都合になっていくだけだ。

とにかく俺たちにできることは、城琳学院の仕事をスムーズに終わらせてしまうことだ。」


「わかってる。
明日から建設への話をつめていくことになってるから、なるみに手を出せないようににらみつけるようにするよ。

それでできれば・・・」


「俺も来てほしいだろ?
明日は行くよ。
噂の彼氏は見ておきたいからな。
妹のダンナになるやつは将来的にも無視は絶対できないし、親戚になるんだからな。
がんばってくれよ。フフッ」



真樹は気分が悪い反面、これが実の兄の姿なのかもしれないと思った。

事実として受けとめるには心境は穏やかではないはずなのに、平然と笑っているなるみの腹違いの兄は、楽しんでいるかのようでもある。


それに比べて、あまりに自分には余裕がなくなっていることを実感せざるを得なかった。



((ただ、昔も知ってるからかわいいだけではないのが身内だな。))



自分の怒りをどうすることもできず、文句ばかり言って肝心のなるみを怒らせてしまったことを後悔するしかなかった。




そしてまたなるみも学校でぼんやりと考えごとをして過ごしてしまっていた。