「そんなぁ!困ります。」
「あ、彼氏に叱られますか。
あくまでも僕の勝手な思いですから、好意がある認識だけもっていてくれたらって思います。」
「彼氏なんていません!あ・・・」
「おや?この間のおまじないをした人は彼氏脱落しちゃったのかな。」
なるみが黙っていると、沢井はさりげなく車でなるみを送る合図をして外へ出た。
寮の門の前まで沢井はなるみを送り届けて、降り際になるみの耳元で囁いた。
「次回のおまじないも僕ができるとうれしいですね。」
なるみはびっくりして首を押さえてしまった。
そういえば、鏡を見ていなかった。
門の中に入ったら真樹がいないことを願いながら沢井の車が出ていくのを見送った。
そして、走って部屋へもどろうとしたとき、ぐいっと腕を引っ張られて管理人室へ押しこまれた。
真樹が怒った顔で睨んでいた。
「どうしてついて行ったの?」
「学校に迎えに来られて、大声で叫ぶわけにもいかないし・・・。
それに高倉君が見てたし。」
「じゃ、高倉君に用があるっていう手もあるし、高倉君に助けを求めればよかったんじゃないか?
彼は僕のところに知らせにきてくれたよ。」
「それは・・・。いきなり話があるって言われて、断る理由が思いつかなくて・・・すぐにもう車は動いてて。」
真樹はなるみが上手に相手を制することなど、まだできないことはわかっていたけれど言うべきことは言っておかないと気がすまなかった。

