虹が見えたら

次の瞬間、沢井はさっとなるみから離れるとにっこり笑って言った。

「今度会うときは、きっとなるみさんには退屈な時間になると思います。
仕事をしているときは、申し訳ないですが時折りあなたのお身内を攻撃してしまう発言も多くなります。

でも、僕は新しい学生寮の建設や管理について、よりいいものやいい方向で話をすすめたいと思ってるし、ライバル会社の争いではなくあくまでもうちは学校法人ですから物を売って儲けるではありません。

学生たちのよりよい生活の場を造ることを１番に考えています。
あ・・・ちょっと難しいですか。自分でも何を言ってるんだか・・・」



「ん～～と、私たちみたいな寮生のためにいいものを造って住んでもらいたいから、敵対っぽいことも言っちゃうってこと？ですよね。」


「そうです。じつは、なるみさんに会うまではひたすら自分の思った通りに突き進むことしか考えていませんでした。
それがいちばん、いいことになると今も思っていますし。
けれど、いきなり僕のいちばん弱い部分を救ってもらっておいて、何もなかったように突き進むことができなくなりました。」



「そんな・・・偶然っていうかお仕事とは別のことですから、そんなに気にしないでください。」


「いえ、僕は君に・・・嫌われたくないんです。
こんなことしておいて、本当に勝手な言い草なんですが、運命の出会いを信じてみたい。
うちの生徒と年も変わらない君を困らせているんだと思います。
だから待つ覚悟はできています。

だから嫌われたくない。奪われたくもない。
すみません。まるで女性とつきあったこともない学生みたいですね。」


「そうなんですか？沢井さんってルックス的にかなりモテそうな感じなのに。」



「城琳へ来る前に勤務していた会社では、かなり女性から話しかけられましたけど、そういうのが苦手で・・・今みたいに返答の仕方がよくなかったのか、怒らせたり避けられたりしました。
それからはね・・・女性より仕事で・・・。

けど、なるみさんは仕事より優先したい女性。
あ、失礼かな。え～と・・・その・・・僕のいちばんです。」