虹が見えたら

まさかなるみも社交辞令で名前をきいただけだったのに、３度目の出会いがあるとは思っていなかっただけに、真樹に事情を説明しながらだんだん怖くなってきていた。


「確かに何のアポイントもなく、３度もそんなふうに会ってしまったら運命の出会いだと思うよね。
でも、ただ僕の代わりに書類を届けただけの高校生に担当者になれとは嫌なやつだな。」



「ごめんなさい・・・。気付いたらすぐに書類を置いて帰ってくればよかった？
大きい仕事だからなんて勝手に引き受けたりして・・・私。」



「なるみちゃんが落ち込むことはないよ。
そもそもは僕がこういう怪我をしたせいなんだから。
それとね、うちの会社のためを思ってくれてありがとう。

確かに最近めずらしいほどの大きな仕事なんだ。
社員はみんなすごく期待しているし、成功すればみんなの報酬も上げてやれる。

だからといって・・・僕はなるみを犠牲にしてまで利益を得たいとは思わないよ。
次に彼に会うときは僕が立ち会うようにするから。

もし、予定日以外の日に２人っきりで会ってほしいといわれても行っちゃいけないよ。
これは絶対約束して。いいね。」



「はい。」



しかし、真樹の予想もしないところでなるみは沢井に会うことになってしまった。

なんと流沢学院高校に沢井がやってきて、なるみを放課後外へ連れ出してしまったのだ。


出かける前に偶然、横を通りかかって声をかけた高倉祐司がなるみが涙目をして訴えているようだったので真樹に知らせにいったのだった。



「しまった！そんな手できたのか。
でも、どうしてそこまでなるみに固執するんだ・・・彼は。」


真樹は伊織や数名の社員に事情を話して、なるみを捜すのだった。


その頃、なるみは海岸近くの喫茶店で沢井と話していた。


「どうしてこんなことするんですか？」


「どうしてだろう。」


「えっ？」