翌週に遠足があって、地元ではおなじみの山へ出かけていくという連絡が担任からあった。
「はぁ・・・遠足ってジャージーで行くんじゃないんだぁ。
カジュアルな服も最小限しか持ってないのに・・・」
なるみは気が重くなった。
働き悪いのに、また真樹にねだることになってしまうのが心苦しかった。
放課後、補習授業のため教室で待っていると、数学担当の先生ではなく、実習生の長野貴之がやってきた。
「吉田先生は出張だから僕が代わりに今日はみます。」
「は、はぁ。よろしくお願いします。」
「山田の話はざっときいたんだけど、すごいがんばりやさんなんだな。」
「い、いえ。授業がついていけないからみんなに迷惑かけてばかりで。」
「いや、殊勝な心がけでいいと思うよ。
高校の授業なんて、最初から最後までわからないやつだっているんだから。
補習受けてほしいやつが受けに来ないからなぁ。
山田は真面目だから、みんなに追いつくどころか天才にしてやるからな。」
長野は最初ではりきっていたせいか、夕飯前までなるみに数学を教えていた。
RRRRRRRR♪
「はい、長野です。あっ!そうでした・・・はい、すぐもどらせますから。
すみません!」
長野はすまなさそうな顔をして、なるみに謝った。
「山田~すまん!今、教頭先生に怒られた。
学生寮の食事の時間って間に合うか?
もし間に合わなかったら先生がおごるわ。」
「あの、お電話借りていいですか?
たぶん大丈夫だと思うんですけど・・・きいてみます。」
なるみが寮へ電話すると伊織が出た。
「あ、もしもし伊織さん?補習が長びいてしまって・・・あ、いいですか?
ありがとう。 じゃすぐ帰りますので。」

