朝、ゴミを出しに出たなるみに真樹が声をかけた。
「伊織からきいたんだけど、なるみちゃん体の具合が悪いんだって?」
「あ、私は大丈夫なつもりだったんですけど・・・なつきや寮長が・・・。
思ってたよりも補習授業と宿題に手間取ってしまって、お仕事にも支障がでて。
すみません!ご迷惑かけるよりは休んだ方がいいって言われたんです。」
「そっか。伊織が休ませた方がいいって言って来たんで、何が起こったのかと思ってたけど、補習ねぇ。
昨日も遅くまで宿題してたの?クマができてる。」
「は、はい。私、数学とか化学が苦手で、約1年のブランクでますますわからなくて授業にぜんぜんついていけないものだから。」
「僕、今夜は予定ないから管理人室まで宿題もっておいでよ。」
「あ、でも管理人さんお仕事大変なのに。」
「あははは、ダメなときは今日はムリ~って言うよ。
いちおう僕はなるみちゃんの保護者だからね・・・困ってることは知っておきたい。
それから、管理人さんって呼び方はやめてほしいな。
伊織みたいに名前で呼んでくれない?」
「真樹さんって?」
「うん。じゃ、今日もがんばって・・・。宿題もってくるんだよ~」
「はーい」
なるみはときどき見せる真樹の子どもっぽい笑顔に意識しないわけにはいかなかった。
「でも、真樹さんって伊織さんと・・・。だからよね、あんな顔できちゃうのって。」
1つ深呼吸をして、なるみは部屋にもどり、学校へ行く準備をした。
登校後、なるみのクラスに教育実習生が来ていた。
「ねえ、彼のことどう思う?」
「え?彼って・・・」
なるみのクラスメイトの田波さやかが教育実習生をさしてそう言ってきた。
「イケメンな先生なんじゃない。」
「だよね~、かっこいいよね~。」

