「じゃあ……はい」


 ノンちゃんはみっちゃんの前にボールを差し出しました。


 ボールの黒い部分が、さらさらと重力に負けて下へと滑り落ちていきます。

 黒に覆われていたその下が、今、明らかになりました。


 虚ろに開いた2つの穴の中には、白く濁ったビー玉のような瞳が1つずつ。

 変な方向へ折り曲がった鼻。

 カサカサに乾いた唇。



 ――そう、それは【人の生首】でした。



 マーくんが先にお母さんのところへ戻ったのは、ノンちゃんの持っている“ソレ”が生首だと気付いたからなのでしょうか。


「きゃあぁぁぁあっ!!!」


 2人が同時に悲鳴をあげると、ノンちゃんは持ち上げていた生首を落としてしまいます。

 グシャッ。

 誰なのかさえ分からない生首は、川の中にある岩の上に落ち、その衝撃で粉々に砕け散りました。

 バラバラに砕け散った頭蓋骨、ドロリとした脳みそ、赤黒い液体が下流へと……海へと流れていってしまいました。


 1 [川] -了-