スパーリングを終え、練習試合の前に少しの休憩と水分補給。


私は顔に防具を着け、グローブの準備をしていた。


「およっ!やってるやってる。龍斗君とひーちゃんの試合、ひっさびさー!楽しみだなぁ」


「春風じゃん。何、野次馬しに来たの?」


うちの前の自販機にジュースを買いに来たであろう春風が、いつの間にかジムのギャラリーに混じっている。


「観る分には楽しいからね、格闘技って。特にキックボクシングは蹴りや肘討ち、頭突きもあるから楽しい」


なんて言いながら春風は白い歯をニッと向ける。


痛いのや辛いのが苦手な春風には実際やるのは向かないだろう。根性もないし、運動は得意だが体力もないからな。


なんて思いながら、アップをする龍兄のいるリングに私も立った。