「やっぱり当たりは池田屋だったか」 午後9時。 のん気な永倉の声が、みんなの張りまくりの神経を緩ませた。 近藤はため息をつきながら、真っ黒の服に身を包んだ山崎に目をやった。 「山崎。トシたちの隊を呼んできてくれ。乗り込むのはそれからだ」 「承知」 近藤の指令を聞き入れると、音もなくその場から姿を消す。 だけどそれから、いくらたっても山崎は土方を連れて戻ってくる気配はなかった。 「遅い。遅すぎる」 そわそわし出す近藤に、隊士たちの緊張の糸も切れる。