文献を読み解けば、思考が明確にならぬ様、恍惚となる香を炊き進めたとある。

『殺されるもの=神への生贄』が、殺される際の痛みを紛らわせるが為に、薬物を使用していたようだ。

「阿片か?」
オリビアは、険しい表情をする。

推測の域は越えぬが、どうやら、火宮の王は、中毒症状に陥ったとよむのが、打倒な筋だろう。

いずれにしろ、まったくもって、ロクな演舞じゃないと、彼女は思う。


一旦、パタンと閉じた本を躊躇いがちに開く。


先ほどの、うつし絵に
眼をむける。


ジルに聞くべきか?
これが、誰であるかと。

でも、尋ねた所で、何かが
自分の生活が
この状況が
変わるわけではない。


無駄な愚問だ。

彼女は、何もみなかった事にして、書庫へ、その黒表紙の書籍を返したのであった。