「生きていれば、今日くらいには戻ってくるか・・・。」


万が一の事があれば、
自分の命はない、などと考えていた折、背後から、声をかけられる。


「まさか、私が死ぬとでも思ったのか?ディック。」

そこに居たのは、紛れもない我が主だった。

若干、憔悴した感はあるが、体は元気そうだ。

胸を撫で下ろす。

「ヴァイス様!!
いい加減になさい!
どれほど探したとお思いですか?!
一体、どこまでおでかけになったのですかっ?!」

自分の執務室で、不在のヴァイスの代わりに、書類を片付けていた彼は、窓から入って来た主に本気で詰め寄った。


「おまえが、それほど怒るとは、珍しいな。ちゃんと答えるから、一方的に叫ばないでくれ。」

ヴァイスは、グラスに水をいれ、喉に流し込んだ。

澄んだ清らかな水が美味しい。


「ヴォルハムンに、行っていたんだ。すまなかった。その様子じゃ随分詰問にあった風だな。」

「並たいていじゃないですよ。それでなくも、噂が立ちやすい時分なんですから、いい加減にしてください。」