熱い風がやんだ。


砂漠に程近い宿場街は、夜になると風もかなり涼しくなる。


本日の宿でもある酒場の二階で、舞の衣装を整えて、
腰までのびた灰黒色のくせ毛の髪をかきあげる。


鏡の前で、全身を確認する。

シースルーや、こんな面積の少ない生地の衣装は、ヴォルハムンでは着ることはない。

水宮ならでは・・・だ。
温かい気候と、水の都たる
歴史をそのままに語るような
衣装だった。

褐色の肌をひきたてる
胸元と腰周りを、申し訳程度に覆う白い衣装。
淵には、赤い糸の装飾がほどこされている。

四肢に結ばれた
長い黄色いシフォンのリボンは
まるで、太陽光線の様。


ストレッチを兼ねたステップを、ちょっと、踏んでみる。

下肢着の装飾ベルトに
縫い込まれたシフォンが
意志を持った生き物の様にゆれた。


「オリビア。」
ノックと共に、呼ぶ声がする。
この店の主のものだ。

「すぐいくわ。」
大きめの声をもって応える。

階段を数段降りると、
満席のフロアが見えた。