ラファエルはミカエルがなんと答えさせようかを分かっているだけに押し黙った。
しかし、それさえも許さないミカエルは自らその答えを口にした。
『私にとってイヴは酷く邪魔な存在なんだよ』
『ッ……頼む…俺はどうなってもいい。イヴだけは…イヴだけには手を出さないでくれ』
あんなにも憎く思っていたラファエルが取り乱しているのが愉しいのか、ミカエルは歪んだ笑みを浮かべる。
そして、ミカエルはラファエルに残酷な言葉を投げかける。
『もう遅い』
フッとラファエルを馬鹿にしたように笑ってイヴの胸に剣の切っ先を向ける。
しかし、幸か不幸かミカエルが持っているのは魔剣だ。
悪魔であるアメリアには魔剣は効かないはずだ。
ミカエルもそれを知っていてこんな芝居じみた事をしているのだ。
けれど、それなら何故―――?
ふと浮かんできた疑問に冷や汗をかく。
ミカエルの目的は私を滅して神になることだが、そのミカエルを裏で糸を引いているのはここにいるアザエルだ。
あの魔剣もアザエルが用意したに違いない。
けれどアザエルがミカエルに魔剣を託し、私に成りすましたアメリアにその魔剣を突き立てさせるとも考えられない。
何故ならアザエルの目的はラファエル様の“闇”を引き起こすことなのだから。
てっとり早く“闇”を引き起こさせたいのなら何故私の姿をしたアメリアを魔剣などで突き立てるのだろうか。
少し考え、行き当たった考えにハッと息を飲む。
気づいた時には既に遅く、ミカエルがニヤリと笑った。

