幕末怪異聞録



キラキラと輝く黄金色の髪に赤の髪紐はなんとも美しかった。


「嬢ちゃんの髪は本当に綺麗だな……。」


「それよりあの鬘はどうした。」


「桂?」


「鬘だど阿呆!!ベタなボケかましてんじゃねぇ!」


青筋立てる時雨を伊藤は笑顔で抑えた。


「あの鬘は捨てた。」


「はぁ!?人のものを勝手に捨てるな!!」


もっともなことを言っている時雨。

伊藤はサラサラと時雨の髪を触った。


「こんなに綺麗な髪をしているんだ。隠す必要はないだろう?」


「……。」


それでもムッとしている時雨に伊藤は再び袖に手を突っ込んだ。


「——ほれ、お詫びの印に簪(かんざし)をやろう。」


「うわぁ!綺麗……。」


黒を基調に赤や青、黄が混じった簪に時雨は思わず目を奪われた。


「ま、これで許してやってもいいぞ。」


そしてまた偉そうに言ったのだった。すると、何か頭に浮かんだのか急に眼光が鋭くなった。


「お前は将来、頂点に立つかもしれんな。」


突然の時雨の言葉に伊藤は目を丸くした。

たかが、一人の女の言葉であったが反故にすることはできなかった。


「ま、私の勘だがな。」


クスクスと笑う時雨。自分でもそれを言った意味するものが分かっていないのだろう。


解放された時雨は伊藤に「簪、ありがとう。」と言って、京の人混みに紛れたのだった。