そのときから、菜落ミノリの命は、先生の「だれを当てるか」という気まぐれにかかっている。

だって、当てられたら正解してしまうから。菜落ミノリは、クラスで一番かしこい。


もちろん、いくら嶋田さんでもコロしたりはしないと思うし、実際、昨日までは、ムシをされていただけだ。

そう、昨日までは。蹴る、みたいな、直接的なことはなかった。


嶋田さんが教室を出て行って、ゆっくり、ゆっくりと音が増えていく教室のなかで、そっと息をはきながら、わたしは思う。


・・・中一のときはこういうの、なかったのになぁ。

わりとみんな、仲が良かった。男子と女子が、今のクラスみたいにパッキリ分かれてしまうことも、なかった。今では男子としゃべっただけで、変な目で見られたり、ウワサされたりする。


中一のクラスのほうが、良かった。好きだった。

わたしのクラス運は、もしかしたら、すべり台方式なのかもしれない。

このまま、どんどん下へ下へ、すべり落ちるみたいに悪くなっていって、そしたら、三年生は最悪最低じゃないか。

下手をしたら、わたしが机を蹴られるかもしれない。