しかし、男の拳はあたしに届くことはなかった。
「………」
「………邪魔」
ドサッと地面に叩きつけられた男の後ろに片足を出して立っていた人物に目を見開く。
買い物帰りなのか、手にはビニール袋を手にしている。
「…………朔夜」
「………よぉ」
椿、とあたしの名前を呼ぶ声は、思ったより優しい。
朔夜は、自分が足蹴にした男の上をずかずか乗りながらあたしの前に立ってぐるりと見渡す。
「随分、暴れたな?」
「………なんでここに?」
「酒が飲みたくなった」
あんた、未成年だろう……、とは突っ込まない。
「そう」
小さく頷いて、朔夜に背中を向けると歩き出す。
朔夜は、当たり前のようにあたしの横についた。


