月夜に舞う桜華




「じゃあね」


よろしく、とあたしは腰を上げると歩き出す。


「……ふ…ざけんな……!」


ザリッと砂を踏む音と共に掠れた声が耳朶に響く。
肩越しに振り返ればよろよろと立ち上がる男の姿があった。


「………立てんだ?」

「うるせぇ……!!桜姫か何だか知らねぇが、女に負けるわけないだろ……!!」


女に、の所をイヤに強調している。
男が女に負けるなんて悔しい?
プライドが傷ついた?


女に、なんて差別だ。


「………弱すぎなんだよ」


でも、その"女に"負けたお前達は、相当弱い。


「弱くねぇよ!!」


ギンッと睨んで男は拳を振り上げながらあたしに向かってくる。


あたしは、やれやれと肩を竦めると、向かってくる男に向き直る。