月夜に舞う桜華




そう思っていたのはあたしだけだったみたいだけど。


「総長のこと?勿論知ってるぜ!」

「知らない奴なんかいないしな!」

「話したりとか、するの?」


すると、男達は大袈裟に首を左右に振った。


「まさか!」

「俺達みたいな下っ端が話せるわけねぇよっ」

「俺達にとっちゃ神だ!」


興奮しながら語る俺達にあたしはへぇ、と相づちをうつ。


和が神、ね………。


(こいつら下の奴かぁ……刺激になるかな?)


暫し考えて……微妙、と答えに行き着く。


「そ……ありがとう」


彼らにお礼を言って背中を向ける。元来た道を戻ろうとしたが、その前に呼び止められる。


「ちょー待ち」


肩越しに振り返るとニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべてあたしを見ている。