月夜に舞う桜華




「急いでるんだから離して」

「用事?送ってあげようか?」


ぐいっと肩を引き寄せられ、瞬時に振り払うと男が眉を上げた。


「あ?」

「今、小野の手振り払ったよな?」


笑っていたのが一変して嫌な雰囲気が漂う。普通の女なら怯えるかめしれないけど、生憎、あたしにこんなのは効かない。


「汚い手であたしに触るな」

「あぁ?!てめ、来い!!」


叫んであたしに伸ばされたその手は、あたしに届くことはなかった。




「…………誰に触れようとしてるわけ?」

「っ!」


あたしに伸ばされた手は、寸前で第三者によって阻まれた。


その第三者の手を目で追い、そこにいた人物達にあたしは目を見開いた。


「っあ゛、」

「なぁ、誰に触ろうとしたんだよ?」


ギリギリときつく男の腕に力が入っていく。