月夜に舞う桜華




掴まれていない自由な片手で握り拳を作る。


(…………悪く思わないでよね)


貴方がいけないんだから。


心の中の中で謝罪する。
手を振りかぶり、狙いを定める。


しかし、その刹那、あたしの体は宙に浮いた。


「っきゃ、」

「危ない奴」


気付けばあたしは朔夜に担がれていた。


「は、離して!」

「殴られたら適わない」

「っ」

「もう少し殺気抑えろよ」


バレバレだぞ、と横目に見られる。


チッと舌打ちをすれば、小さく笑われる。


「不思議な女だ。雅龍を怖がらないし、殺気も出す。」


俺を見て、なにもしない。


「…………」

「一体何者だろうなぁ?」


ガラガラと片手で重い倉庫のドアを開ける。