温かな湯気が優しく部屋を包む。


穏やかな朝。
温かい空気。


全てが初めてで心地よい。


もう、あの日には戻れない。


でも、それでいい。


だってあたしの側には朔夜がいる。


それだけで十分だ。



「ねえ、朔夜」

「ん?」

「バイク、乗りたい」


頬杖をつきながら聞いてみるとご飯を食べている朔夜の眉間に僅かに皺が寄る。


「………後ろに?」

「勿論」


頷くと、朔夜は「ん」と返事する。了承の表れ。


「ありがとう」

「その代わり、今日から一緒な」

「だから、病み上がりなんだけど」

「何もしねぇよ」







「――――考えてみる。」




クスリと笑えば、クスリと笑い返される。