「朔夜、朔夜」


肩を揺すって名前を呼ぶ。


「………ん」


眉間に皺を寄せて、朔夜はゆっくりと目を覚ました。下にいるあたしをその瞳に映すなり、珍しい柔らかい笑みを浮かべる。


―――ドキンッ


不覚にもその笑みに胸を打たれるあたし。


「―――つばき」

「さ、朔夜、おはよう」

「はよ……」


舌足らずでしかもまた寝ようとしているのであたしは慌てて朔夜の頬を引っ張る。


「また寝る前に、退いて」

「………なんで」


不満そうに眉を寄せる。


「重い」

「………知るか」


頬を膨らませて朔夜はあたしを抱き込み体を横に倒す。
ぐるりと一回転したかと思えばあたしと朔夜の位置が逆になる。


「………これでいいだろ」


文句ないな、と朔夜は目を閉じる。