「拓哉~、今日体育野球でしょ?
絶対応援するからね!!」
休み時間になれば
同じクラスだけじゃなく他のクラスからも
拓哉と話したいがために女が寄ってくる。
特定な彼女を作らないのが拓哉の主義だった。
誰とでもいい。
誰でもいい。
『好き』なんて感情は今まで1回も感じたことはない。
でも…
整ったルックスから女が群がり始めて…
別に断る理由もなかったため
みんなに同じように優しく接している。
今の状態は嫌じゃなかった。
クールな昴一とは違って
拓哉は人当たりがよかったし
何より女の子が好きだった。
優しくてふんわりした雰囲気を持つ女の子。
加藤家にはいない存在。
「応援してくれんなら頑張るかな~
じゃあ勝ったらなんかくれる?」
「拓哉だったら何でもあげるよ。
…あたしでもいいよ~?(笑)」
ふざけた会話も楽しかった。
まるで中身のない会話。
加藤家では交わしたことのない会話。
でも…
どんなにモテても楽しくても
なんだか満たされない。
拓哉に群がる女を気にもせずに
机に突っ伏して寝ている昴一のほうが
幸せそうに見える。
いい家族がいるから…?
…本気で好きな女がいるから?
『桃香』だっけ…
どんな顔してんだろ。
そんなに可愛いんかな…
そんな事を考えながら
女の話に笑顔を作る。
群がる女が…
みんな同じ顔に見えた。
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