「…何、その目(笑)

ってゆうかさ、他のセンセーなんか
オレに注意もしてこないよ?


オレが親父にちくったら首が飛ぶからね」


中学生なのに

そう笑う拓哉の表情はとても妖美で…


そんな表情の拓哉に見つめられている上原が

ゆっくりと口を開いた。


「…あきれた」


「は?」


予想外の言葉に拓哉が聞き返すと

上原がキッと拓哉を見つめた。


「呆れたって言ってるの!

父親が理事長だからって生徒は生徒でしょ?


加藤君だっていけない事をしたら注意されるのが普通よ!

それを理事長に言いつけるのは間違ってるっ」


いかにも新米教師らしく正義感丸出しの言葉が面白くて…

拓哉がふっと笑みをこぼす。


「…いいの?

そんな事言って(笑)

センセーはいいんだ?


新任早々首になっても…」


拓哉が挑発するようにニヤリと笑って見せると

上原が拓哉をまっすぐに見つめたまま口を開いた。


「いいわよ。

そんな学校ならいても意味ない」


「…へぇ(笑)」


拓哉が一歩一歩上原に近づく。


近づいてみて分かったが…


上原の手が

小さく震えていた。



その手を見つめながら

拓哉が少し笑みをこぼす。


「…安心していいよ。

オレセンセーの事気に入っちゃったし

親父には言わないから」


そう言って保健室のドアを開け廊下に出る。


「また明日くるね、センセー」


顔をしかめた上原にそう残し

拓哉がドアを閉めた。



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