「なんだ?」


父親の重たい声が部屋の中に響く。


初めて見る理事長室は

高そうな絨毯が引かれていて
歩き難かった。


「賀川先生と上原先生の噂信じてる?」


拓哉の言葉に父親が少し躊躇した後口を開いた。


「それはこれから本人達に確認するが…

ここまで生徒達に噂になってる以上
何かしら疑わせる行動があったんだろうから…」


「その噂さ、オレが流したんだよね」


父親の言葉を遮るように拓哉が口を開く。


「なんか、オレが授業サボるの
上原が注意したからムカついて(笑)

だからあの噂は根も葉もない嘘(笑)」


拓哉が少し方をすくめて笑って見せると

父親が顔を歪めた。


「…本当か?」


拓哉が苦笑いしながら頷くのを見て…


父親が拓哉を睨みつけた。


「お前は本当にどうしょうもないな…

和也はあんなに優秀で品行方正なのに…


血が繋がってるとは思えないな…」





父親の気が治まるまで

自分への愚痴を聞いて理事長室を出ると


ドアのすぐ傍に上原の姿があった。





拓哉より15センチ以上下から
拓哉を見上げていた。


その手には…


『辞職願』

そう書かれた封筒が握られていた。





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