でも
上原にもらった言葉がうれしかったのも
上原が自分の心の穴に気づいてくれたのも
紛れもない事実で…
今回の事だって
勝手に気持ちを踏みにじられた気持ちになってるだけで
上原も賀川も誰も悪くない事は拓哉自身わかっていた。
「…昂はいつから『桃香』が好きなの?」
寝たままの昂一に拓哉が聞いた。
「…5年くらい前?
わかんね、もっと前かも。
つぅか呼び捨てにすんな」
昂一の言葉に拓哉が笑う。
「どうせ暇だしその記録に挑戦してやるよ(笑)
昂ができたんだからオレにできないはずないしね」
拓哉の意味不明な言葉に昂一が顔を上げる。
「なにが?」
「相手を見守るだけの片思い」
昂一の視線の先で
拓哉がにやっと笑って…
そのまま教室を出て行った。
向かった先は…
まだ一度も入った事のない理事長室。
ノックをすると
中から父親の声が聞こえた。
「どうぞ」
相変わらず嫌になるくらい真面目な声に
拓哉が苦笑いを浮かべながらドアを開けた。
拓哉の姿を確認した父親の顔が驚きに変わる。
「ちょっと話があるんだけど」
拓哉が苦笑いを浮かべたまま…
父親を見つめて言った。
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