「ねぇ、
賀川と上原、今日の放課後
理事長に呼び出しくらってるらしいよ」
2人の交際の噂から1週間
今度はそんな噂が立てられていた。
こうなる事は予想はできていた。
教師同士の恋愛はご法度。
生徒にバレてるとなれば余計にまずい。
どっちかがとばされるか
もしくは退職するか…
「でも賀川ってまだ教育実習生じゃん?
大学退学になるのかな?」
「上原も先月きたばっかの新任だし…
まぁどっちも辞めるんじゃん?」
昼休みに生徒がいいように話しているのを
拓哉が聞いていた。
「…どうすんだよ」
黙っている拓哉に昂一が口を開いた。
昂一の視線の先で拓哉が呆けた状態のまま答える。
「どうするって…
別にどうもしないけど?」
「それでいいんだ?」
珍しく突っかかってくる昂一に
拓哉が視線を移す。
「だって…
別にオレの女じゃねぇし!
なんで賀川の女をオレが助けなきゃなんねぇんだよ」
少し声を荒立たせながら言う拓哉から
昂一が目を逸らした。
「…誰の女でも上原は上原だろ。
オレだったら桃が他の男と付き合ってても…
オレが助けられるなら桃を助けたい。
…まぁその前に他の男になんか渡さねぇけど」
そう言って机に突っ伏した昂一を
拓哉はしばらく見つめていた。
『好き』の気持ちがなくなったわけじゃない。
こんな早くに忘れられるはずがない。
だけど…
希望もないのにまだ想いの消せない自分を認めたくなかった。
可能性がないのに想い続ける事は
あまりに悲しすぎる気がして。
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