考えてみれば


上原と交わした会話なんて数えるほどで…


一緒にいた時間だってきっと2時間にも満たない。



それなのに


1回だけ見せた微笑や


少し舌っ足らずのしゃべり方や


華奢な体や


長い黒髪や


白い肌や


…賀川に見せた女の顔が



頭から離れない。





『なんで?

きっかけは?』


しつこく聞いたオレにいつか昂が答えたっけ。



『気が付いたら桃しか考えられなかった』



…こうゆう事だったんだ。


確かに昂の言うとおりだよ。







頭より先に…

勝手に心が反応して…


上原を欲してた。



オレの気持ちなんかおかまいなしかよ…


勝手に好きになりやがって…


…勘違いならよかった。


気づかなきゃよかった。




昂みたいに


大切に大切に
見守るように相手を想うことなんか


オレには到底できない。




今までは誰も好きじゃなかったから


だから昂の気持ちなんか
本当は分かってなかったんだ。


『好き』が

決して楽しいだけじゃないことに…




『オレだけのものにしたい』


気持ちが大きければ大きいほど

そう思うに決まってる。



それを押さえて…


ギリギリのところで押さえて…



大切に想い続ける。




だからあんな切なげに笑ったんだな。






『好き』


その気持ちを知った今


『届けられない好き』


その辛さを知った今



オレも昂と同じ顔をしてんのかな。



切なそうに…



笑ってんのかな…






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