【短編】初恋物語-缶コーヒー-



「ちょっ…加藤君?!」


戸惑って抵抗する上原を無理矢理ベットに押し倒した。


「…何?」


上原は状況が把握できない様子で…

おびえた目で拓哉を見上げていた。


「…賀川と付き合ってんの?」


ずっと黙ってた拓哉が
やっと言葉を口にする。


拓哉の視線の先で…
上原が動揺した表情を見せる。


「……」


「…正直に言えよ」


いつもとは違う…

拓哉の真剣な言葉に

上原が結んでいた口を開いた。


「…付き合ってる」




上原の言葉を聞いた途端…


頭に血が上っていくのが分かった。



「…なめんじゃねぇ」



上原を押さえつけている手に力が入る。



そしてもう片方の手で上原の顎を上げた。



「加藤君っ?!


やっ…」




上原の唇を無理矢理奪おうとして…


後数センチまで顔を近づけた時

上原の顔を見た。





顔をゆがめて…

目を固く閉じ…


その目じりにはうっすらと涙が滲んでいるようだった。








上原の表情に…


押さえつけた手の震えに…



拓哉が歯を食いしばる。






「くそっ!…」


止まらなくなった自分を制止するように…


拓哉が勢いよく上原から離れた。




そしてそのまま保健室から出た。








今日は



上原が後ろから呼び止める声が




聞こえなかった。






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