翌日も拓哉は保健室を訪れていた。
気分が悪いと嘘をつきベットに横になる。
「大丈夫?」
半信半疑で聞く上原に
小さく笑みを返した。
別に気分なんか悪くない。
どこも怪我もしていない。
でも…
なんとなくここに足が向かって…
追い返されない方法がそれしか見つからなかった。
何かを話したわけでもないのに
上原の顔を見たときから心臓は忙しく動き続けていた。
それでも同じ部屋にいるだけで…
心が落ち着くような気がした。
ドキドキしてるのに癒されていく…
不思議な感覚に拓哉が目を閉じる。
珍しく何も話しかけてこない拓哉に
上原は少し戸惑いながら拓哉の様子を伺っていた。
そして
上原が口を開いた。
「加藤君…
昨日の話だけどね?」
上原の声に拓哉が目を開ける。
その先には天井が映った。
「もしも…
本当に家族の事で悩んでるなら私に相談して?
お母さんにはなれないけど…
お姉ちゃん代わりくらいにはなれるかもしれないし…
何かいい方法がないか…
一緒に考えよう?
会った時から思ってたの。
加藤君、ずっと寂しそうだった」
優しい落ち着いた声が拓哉の耳に入り頭を支配していく。
今まで
女に不自由したことなんかなかった。
いつでも周りにいたし優しくされた。
でも
それはあくまでも女の都合。
自分が会いたい時にオレに会いに来て
遊びたいときにオレを誘う。
オレが本当に寂しい時は…
いつも誰もいなかった。
あんなにオレにくっついて回る女も
オレの変化に気づかなかった。
別に
それでもよかったのに…
オレ、ちゃんと笑えてたのに…
それなのに
上原は気づいてくれたんだ。
心のどこかで寂しがってるオレに。
気づいてくれた。
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