「ねぇ…」


「ちょっと」


気持ちいい眠りから現実に戻す声に
拓哉が顔をしかめる。


重いまぶたを無理矢理開くと
明るい太陽の光がまぶしい。


季節は…夏。


9月と聞けばなんだか秋のようにも感じてしまうが
温度計は28度を示していて…

残暑もいいところ、真夏のような暑さだった。


ぼんやりと保健室のベットから天井を眺めていた拓哉の視界に
突然女の顔が割り込んできた。


「ちょっと起きてっ」


…誰だっけなぁ。


真面目な子は相手にしない主義なんだけど…



まぁたまにはいっかぁ…


長い髪を後ろで束ねた目の前の女の腰に手を当てる。


そしてもう片方の手で女の手を引っ張り…


「チュウしてくれたら起きてあげる」


「……」


拓哉が微笑みながら目を閉じる。


つぅか、この子何年だろ…

オレ会ったことないよなぁ…



「…―――いっ!?」


キスを待っていた拓哉の唇に
何か硬いものが叩きつけられて

拓哉が思わず飛び起きる。



「…目が覚めた?

勝手に保健室で寝ないで!


キミ、クラスと名前は?」


そう言って出席簿片手に拓哉を怪訝そうに見ていたのは…


「…あんた誰?」


拓哉が見たことのない女だった。



夏の重苦しい風が窓から入ってきて

気持ちが悪い。


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