「センセー」
保健室の窓から話しかけた拓哉に
上原が驚く。
「加藤君っ
何、そんなところから…」
「オレの家族、
オレが嫌いみたいなんだけどどうすればいい?」
「……」
無表情で言った拓哉を
上原が真剣な目で見つめる。
「…本当に?」
そう聞きながら窓に近づく上原の表情はとても真剣で…
心配してくれる気持ちが伝わってきた。
誰に言ってもバカにされるような気がして
今まで言えなかった事…
『嘘つくなよ(笑)』
『拓哉超うける(笑)』
そんな事を言われるのが分かってたから
言わなかった事。
でも
本当はずっと心にあった。
それを
上原ならなんて答えるのか…
同じようにバカにするのか…
知りたかった。
だけど―――…
拓哉が満足気な笑みを
上原に向けた。
「やっぱいいや、センセー」
そしてそう残すと
手を振って歩き出した。
「え、加藤君!」
窓から上原が顔を出して拓哉の後姿に呼びかける。
そんな上原にもう一度手を振って見せた。
十分だよ、センセー。
オレの言葉を信じてくれた。
心配してくれた。
悩んでくれようとしてくれた。
目を逸らさずに見つめてくれた。
…それだけで十分。
『好き』
拓哉の心の中で
その思いが確実なものへと変わっていく。
暖かい気持ちが…
拓哉を包んでいた。
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