「センセー!」


大声をあげて入ってきた拓哉を
上原が驚いた表情で見た。


そして顔の前で人差し指を立てる。


「今寝てる生徒いるから静かに」


小声で言った。


「了解」


軽く手を上げて笑ってみせる拓哉を
上原が呆れたように見ていた。


「今日は何?」


椅子に座りなおしながら上原が聞く。


視線は机の上の難しそうな書類に向けられてままで…


胸くらいまであるキレイな黒い髪は今日も後ろで束ねられている。

白衣の中からは甘めのトップスと膝丈のタイトスカートが覗いている。


小柄な体に童顔な顔…

真っ白な肌…



何も言わずに見つめていた拓哉を不思議に思った上原が

拓哉を見上げた。


2人の視線が空中でぶつかる―――…



その途端に

拓哉の胸が騒ぎ出す。


今まで誰といても同じリズムを刻んできた心臓が…

上原だけに反応する。



拓哉は何も言えずに…

目の前の上原をただ見つめていた。




『自分を知ってもらう』


言ってる意味はよく分かるのに

そんな過程はまどろっこしくて…


今すぐにでも自分の腕で抱きしめたい衝動に駆られる。




「気分でも悪いの?」


一方の上原は
目が合ってもなんともない様子で…


そんな上原に勝手に腹が立った。


自分ばかりが意識してるのが悔しいような…


目の前で余裕ぶる上原を困らせたいような…



子供っぽい感情が湧き上がってくる。







「…センセー。

オレと付き合ってよ」



心臓を早いリズムで刻ませたまま…


拓哉がその心臓を隠すように
余裕のある笑みを浮かべながら言った。





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