初めての気持ちに動揺が隠せなくて…



それでも上原の声を聞くたび…

保健室の前を通るたび

『上原』

同じ苗字を見るたびに


拓哉の心臓は忙しく反応した。



そんな自分を感じるうちに…



自分でもはっきりと自覚していった。



『好き』の気持ちを…




だからと言ってどうするわけでもなく…



女性関係は豊富でも
きちんと付き合ったことなんて1度もない。


告白したことだってもちろんない。


何を隠そう、これが

『初恋』なんだから。





つぅか…


センセーって…


初心者なのにハードル高いよ…



大体、好きになったらまず何すんの?


廊下の真ん中で拓哉が頭を抱えていた時

後ろから呼びかけられた。


「加藤、邪魔」


振り向くと教育実習生の賀川が立っていた。


「廊下の真ん中で暴れてんな(笑」


「ねぇ、賀川ちゃん。

好きになったらまず何をするべきだと思う?」


拓哉の言葉に賀川が面食らったような表情を見せた。


「…おまえあんなに女子と一緒に居るのに今更なに聞いてんだ(笑)」


そう笑いながら拓哉を通り越した賀川を拓哉が追う。


「や、マジなんだって!

何すればいいの?」


笑ってた賀川だったが

拓哉の真面目な顔に少し戸惑った顔を見せて…


「…話しかけて仲良くなって自分を知ってもらうとか?」


賀川の答えを聞いた拓哉の顔が急に明るくなる。


「わかった!

サンキュ」


そう言いながら走り出した拓哉を
賀川の声が追いかけてくる。


「あ、走んな!」


そんな声を聞き流しながら…

拓哉は上原のいる保健室に向かって走った。



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