「いってらっしゃい」


「うん、いってきます。……みとも。」



くしゃ、って。


もともと寝起きでぐしゃぐしゃやったウチの頭をなでて、いっちゃんはドアから出て行った。



…いっちゃんはここんとこずっと、バイトの鬼になってる。


バイト先のカレー屋さん、何人か辞めてもてんて。

しかもいっちゃんはベテラン組やから頼られてる立場やねんて。


今日のシフトも、昼から夜のラストまで。


バイトやなくて社員さんみたいに働いてるやん。



ウチは今まで短期のバイトをいくつか入れたりしてたけど、最近はお休み。


実習があったのもあるし、終わってみれば卒論も仕上げていかなアカンので何かと忙しかった。



お湯をわかしてインスタントコーヒーを一杯だけ作る。


電源をつけて、パソコンへ向かった。



…ほんまは家でやったらダラダラしてもて効率悪いんやけど、大学まで出ていくのめんどくさいねんな。



「熱っ……!!」



…うわ、舌、やけどした。



部屋の中は、パソコンのキーボードをカタカタ鳴らす音だけ。