莱があたしの傍に居るのが、あたりまえだった。この8年間、そうやって生きてきた。

それでもあたしに、莱を追ってROSAに入る勇気なんてない。それ以前に、大嫌いな美凪さんがボスであるROSAにおいて、あたしが忠誠を尽くせる自信もない。

そんな状況で1年弱。
ただ遠くから莱を見つめるしかできなかったあたしに、あたしの人生を揺るがすような出会いがやってくる。


「アナタ、いつもここにいるわね。」


遠くから莱を見つめるあたしを見下ろし、
話し掛けてきた女の人。


「そしていつも、あの子を見てる。」


淡々と言葉を紡ぎ、
あたしと視線を合わせる。


「あの子のこと、好きなんでしょ?」


そして至近距離で紡がれた言葉に、どくん、と胸が鳴った。何で初対面のあなたが、そんなこと……


「美凪が、憎いでしょ?嫌いでしょ?」


一体、何を言ってるの…?


「私が、アナタに協力してあげる。」


あたしの理解が追いつかないままそう言った目の前の女性は、ニヤリと何かを企むように口角を上げる。そして。


「だから、アナタ。私と、手を組まない?」


―――ああ。
悪魔があたしに囁いた。





【END】