「……莱。」
「わかってるよ芽梨。でも俺は、」
「美凪さんが、好きになったの?」
「…………は?」
前方を見据えていた莱の視線が、訝しげにあたしへと向けられる。でもその瞳が確かに揺らいでいて、あたしは確信した。
「好きになったから、美凪さんの傍に行きたいんでしょ?」
「……違うよ、芽梨。別に好きとかじゃない。」
「じゃあ、何だっていうの?」
「ただ、憧れてるだけだ。」
「好きも憧れも、あたしにとっては変わりないっ!」
「芽梨っ!」
こんなにも莱が好きだったのはあたしだけ。
たくさんの時間を一緒に過ごしたのに、笑いあったのに。
出会ってまだ僅かの、どんな人かも良くわからないあの人に、あまりにも簡単に莱の心を奪われたことが、ただ悔しくて。悲しくて。
溢れそうな涙を必死で堪え、莱に気づかれないうちに顔を背けた。