「ふぅん……。」


まじまじとあたしを――正確にはあたしの髪を見る莱は、そう呟いたっきり何一つ言葉を発さない。

例えお世辞だとしても、莱に「似合う。」とか「可愛い。」とか、言って欲しかったのに。

そんなあたしの心境を知る由もなく、莱はヘアカラーの箱に視線を落として、また盛大なため息をついた。

刹那、何ともタイミング悪く、部屋に入って来たのは施設の先生。あたしの髪と莱の手にある箱を見比べ、先生の笑顔は面白いくらいに固まった。


「芽梨、ちゃん……?」

「おはよう、センセ。っていうかどう?似合うでしょ?」


だからあたしは、そう言って笑う。
あからさまに眉間にシワを寄せる先生を見て、莱は項垂れるように大きく息を吐いた。