後悔が胸に押し寄せてきて、いたたまれない気持ちに唇を噛み締める。ギュッと強く拳も握りしめれば、そのあたしの手の上、莱の手が優しく添えられた。


「…――帰ろうか、芽梨。二人で。」

「え……?」

「そして謝ろう。先生にも、相手にも。
俺が、ついて行ってあげるから。」


相変わらず浮かぶ、ふわり、とした笑顔。その笑顔が優しくて、その優しさがまるで兄のようで。


「……うん。」


小さくそう呟き、莱に手を引かれるまま施設への道を歩む。

暗くなった道も、莱が居るから怖くはない。
あれだけ意地を張っていたあたしも、莱の言葉のおかげで素直になれそうだ。

だから施設に戻ったらすぐ、先生に謝ろう。そして明日、喧嘩相手にも。

莱が一緒だから、大丈夫。
莱が笑ってくれたから、くだらない意地を張るのはもうやめた。

そして刹那、ふと思う。
あたしのことをわかってくれる莱を、あたしはきっと好きなんだ、と。