桃色チェリー


「うわ。何、芽梨。それに、何泣いて…」

「莱にっ、会いたかったの。」

「意味、わかんないよ。」


そんなの、あたしが1番意味をわかってないよ。ただ莱を見た瞬間、悔しさとか心細さとか全部、何でもないことのように思えたの。


「……先生と、喧嘩したんだろ。」


莱から身体を離した刹那、一呼吸おいて莱はあたしにそう問い掛ける。先生が莱に状況を説明してるんだと察して、あたしは小さく頷いた。


「……そっか。」

「莱は、芽梨を信じてくれる?悪いのは芽梨だけじゃないって、わかってくれる?」


そして今度は、あたしから核心の問いを莱に向ける。涙を拭きながら、縋るように問いかけたあたしを、莱は一瞬何かを考えるように見つめたけれど、刹那、今まで見たことのない、ふわり、とした笑顔をあたしに向けた。